天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「あ、赤星!?」

僕が抱き締めた瞬間、突き刺さっていた矢は消滅した。

「今から…僕の血と力を上げる」

僕は初めて、アルテミアを抱き締めていた。

本当なら、嬉しいはずが…

少し切なかった。

「赤星!」

アルテミアは、何とか離れようとした。

アルテミアには、これから…僕がやろうとしていることを理解できたからだろう。


「やめろ!肉体を失ってもいい!もう一度、お前と融合したらいい!」


僕は、首を横に振った。

そして、強く抱き締めた。

「君は…君の体でいてほしい」


「赤星!」

「最後に、君を抱けてよかった」

僕は体を離すと、アルテミアに笑顔を向けた。

「あ、赤星!」

「は、初めてだから…ご、ごめんね」

「ば、馬鹿!」


はにかみながら…僕はアルテミアの唇に、唇を重ねた。


そして、再び抱き締めた。


(赤星…)




アルテミアの頬に、涙が流れた。

それは、嬉しさの涙であったが、


悲しみの涙でもあった。




アルテミアは、僕に抱かれながら…眠りについた。











数分後、立ち上がった僕の目の前に、眠るアルテミアがいた。

体にあいた穴は、塞がっていた。

「アルテミア…」

僕は目眩を感じ、床に膝をつけた。

だけど、倒れはしない。


どこからか、チェンジ・ザ・ハートが飛んできた。

「大丈夫だよ」

僕はチェンジ・ザ・ハートを掴むと、アルテミアの側に突き刺した。

「アルテミアを守って上げて」

すると、二本のチェンジ・ザ・ハートから光が放たれ、

アルテミアを包んだ。



「アルテミア…大好きだよ」

僕は力を込めて、立ち上がった。

もう体には、ほとんど力が残っていない。

少し回復した魔力も、血も…アルテミアに与えた。もう戦えないかもしれない。



だけど。



「いってくるよ」

僕はアルテミアに微笑みかけると、背を向けた。


最後の戦いに向かって、歩きだした。

愛する人を守る為に。

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