天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
ライは、僕の背中から突き出た拳を握りしめた。

「あとは、お前の血を吸いとれば」



「無駄だ。僕の血のほとんどは、アルテミアにあげた!」

僕は、ライの腕を掴んだ。

「ライよ!僕は負けないと言ったが、勝つとは言ってない」

「き、貴様!?」

僕が掴んでいるライの腕から、肉が焼ける匂いがした。

「お前は、僕から逃げれない!」

「な、何をするつもりだ!」

ライは、僕の胸から腕を抜こうとしたが、

抜けなかった。

「ライ!お前を封印する!残りのすべてをかけて!」

左手の薬指にはめた指輪が輝くと、僕の体が燃えだした。

「僕は、この世界の人間じゃない!」

僕の体が、炎そのものと化していく。

「いずれ…この世界で生まれた者が、お前を必ず!倒す!」

「貴様!」

「だから…その時まで共に眠ろう」




命を燃やした僕の力は、アステカ王国を揺らした。



「赤星くん…」

揺れる玉座のあいた壁から、ジャスティンが姿を見せた。

やっと動けるようになったようだ。

突き刺さっていた矢を抜くと、ジャスティンは僕を見た。

分子レベルで、分解していく僕は、ジャスティンに振り返り、

「アルテミアを頼みます」

頭を下げた。


ジャスティンは、僕がやろうとしていることを理解した。

「わかった」

それだけ言うと、玉座の間に背を向けて、走り出した。


「赤星浩一!」

強引に、僕の炎を吹き飛ばそうとするライに、笑いかけた。

「海底で、頭を冷やそう…。今のお前を、誰も愛さないから」



僕の体と精神は、炎の鎖になり、

ライの全身に絡み付いた。


その鎖は、ライの皮膚と同化に、

力では外せなくなった。


「こ、こんなところで!」

もがいても、鎖は切れない。

「やっと…人を…滅ぼせるのにいい!」



ライの絶叫は、


崩れていくアステカ王国の崩壊の音に、かき消された。
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