天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
兜は、じっと九鬼を見つめ…少し言葉を発するのを躊躇ったが、

ため息とともに吐き出した。

「今回は、憑依型と違い…寄生型だ」


「寄生型?」

九鬼は眉を潜めた。

兜はこくりと頷いた後、少し首を傾げ、

「共生型ともいうべきかな…」

顎に手を当てた。

九鬼はそんな兜を、少し訝しげに見た。

兜は九鬼の視線に気付き、ゆっくりと背を向けた。

「…やつは、君を名指ししてきた」

兜は、奥の窓に映る九鬼の姿を見つめ、

「君を呼んでいる」

少し目を細めた。


「その意味は、何です?」

九鬼の質問に、兜は肩をすくめ、

「知らんよ」

ゆっくりと振り返ると、九鬼の足下に目を落とした。

そして、九鬼の影を凝視し、

「大方…仲間を倒した君に、復讐でもしたいんじゃないかね?」

「…」

その言葉を聞いた九鬼は、身を翻すと、準備室を出ていこうとする。

「待ちたまえ!」

兜は、九鬼を止めた。

「これは、罠だ!…そして」

「あたしを呼んでるならば…いくだけです!」

九鬼の叫びにかき消された続きの言葉を、兜は噛み締めた後、

九鬼に体を向けた。

「丸腰でいく気かい?多分、今度の相手は、人間では勝てない」

九鬼に笑いかけると、兜は何かを投げた。

片手で受け取った九鬼は、目を見開いた。

「これは!?」

兜はフッと口元を緩め、

「これがなければ戦えないだろ」

九鬼の手にあるのは、黒い乙女ケース。

「フッ。こいつは、例のやつとは違うが…人の守り神として、ある場所で祀られていたものだ」

兜は乙女ケースに目をやり、

「幾多の時代を得て…闇と戦える武器は…こいつしか残っていない」

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