天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「病院?」
九鬼は、巨大な市民病院の前にいた。
病院で、待ち合わせとは聞いたことがない。
(まあ…相手は、闇だが…)
九鬼は、無意識にチェックのスカートのポケットを確認した。
そこに、乙女ケースがあったからだ。
学校が終わって、まっすぐにここに来た為、ちょうど夕暮れと重なった。
白い建物が、夕陽に照らされ…1日の最後を飾っていた。
赤と黒…。
巨大な建物が落とす影が、濃い。昼間は気づかない…影という闇が、浮き彫りになる。
もうすぐ…すべてが闇になる。
九鬼は、病院前の駐車場を横切ると、来客用の出入り口に向かった。
一階フロント前は、受付が終わったのか…誰もいなかった。
というよりも、病院自体に人がいないように思えた。
だけど、九鬼は気にせずに、フロントを突っ切ると、
まっすぐにのびる廊下を歩き出した。
右にある窓から、夕陽が差し込み、赤と黒の縞模様のように見える廊下を、ただ歩く。
横から見ると、九鬼の体もまた…光の縞模様があるように感じられた。
廊下を半分くらい過ぎると、赤は急速に消えていく。
一瞬の最後の輝きを、九鬼の横顔に浴びせると、
闇がすべてを支配した。
廊下に、電気がついていない。
『ううう』
嗚咽のような泣き声が、闇の中から、聞こえてきた。
九鬼は足を止めると、廊下の先の闇を凝視した。
何かいる!
九鬼は一瞬、構えそうになった。
しかし、泣き声が聞こえた方からは、殺気が感じられなかった為、警戒しながらも摺り足で、廊下を歩き出した。
いつでも、蹴りが放てる体勢を取りながら…。
「!!」
いつのまにか、泣き声は九鬼の後ろに移動していた。
はっとした九鬼が、振り返ろうとした横目に、
うずくまる人影が映った。
真っ暗な廊下に、さらに暗い影が膝を抱えて、うずくまっていた。
九鬼はそれを見て、蹴りを放つ体勢を解いた。
なぜなら、影は小さな女の子だったからだ。
九鬼は、巨大な市民病院の前にいた。
病院で、待ち合わせとは聞いたことがない。
(まあ…相手は、闇だが…)
九鬼は、無意識にチェックのスカートのポケットを確認した。
そこに、乙女ケースがあったからだ。
学校が終わって、まっすぐにここに来た為、ちょうど夕暮れと重なった。
白い建物が、夕陽に照らされ…1日の最後を飾っていた。
赤と黒…。
巨大な建物が落とす影が、濃い。昼間は気づかない…影という闇が、浮き彫りになる。
もうすぐ…すべてが闇になる。
九鬼は、病院前の駐車場を横切ると、来客用の出入り口に向かった。
一階フロント前は、受付が終わったのか…誰もいなかった。
というよりも、病院自体に人がいないように思えた。
だけど、九鬼は気にせずに、フロントを突っ切ると、
まっすぐにのびる廊下を歩き出した。
右にある窓から、夕陽が差し込み、赤と黒の縞模様のように見える廊下を、ただ歩く。
横から見ると、九鬼の体もまた…光の縞模様があるように感じられた。
廊下を半分くらい過ぎると、赤は急速に消えていく。
一瞬の最後の輝きを、九鬼の横顔に浴びせると、
闇がすべてを支配した。
廊下に、電気がついていない。
『ううう』
嗚咽のような泣き声が、闇の中から、聞こえてきた。
九鬼は足を止めると、廊下の先の闇を凝視した。
何かいる!
九鬼は一瞬、構えそうになった。
しかし、泣き声が聞こえた方からは、殺気が感じられなかった為、警戒しながらも摺り足で、廊下を歩き出した。
いつでも、蹴りが放てる体勢を取りながら…。
「!!」
いつのまにか、泣き声は九鬼の後ろに移動していた。
はっとした九鬼が、振り返ろうとした横目に、
うずくまる人影が映った。
真っ暗な廊下に、さらに暗い影が膝を抱えて、うずくまっていた。
九鬼はそれを見て、蹴りを放つ体勢を解いた。
なぜなら、影は小さな女の子だったからだ。