天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「無駄よ」

ブラックの正拳突きを顔面にくらっても、デーテはびくともしない。

逆に、ブラックの腕に激痛が走った。

「母親に手をあげるなんて…何て子かしら」

デーテの横凪に払った爪が、ブラックの胸元を切り裂いた。

「クッ」

顔をしかめながらも、一瞬で3メートル程距離を取ったブラックに、デーテは少し感心した。

「へえ~。逃げ足だけは一人前ね。だけど」

デーテの髪が逆立つと、静電気が発生した。

「かつての月の戦士には、遠く及ばないわ」

電流が闇を侵食し、ブラックの全身にも絡み付いた。

「きゃあ!」

ブラックは思わず、悲鳴を上げた。

「このまま…気を失いなさい!そうすれば、目覚めた時…あなたは、あたしと一緒になっているわ」


電流は止めどなく、ブラックに流れていく。

悲鳴すら発することがなくなったブラックの様子に、デーテは微笑んだ。

「さあ…お眠り」



ブラックは、膝から崩れて落ちた。

そのまま倒れるかと思われた時、

ブラックは目を見開いた。

噛み締めた唇から、血が流れていた。

「フン!」

気合いを入れると、全身に絡めついた電流が消し飛んだ。

「何!?」

驚くデーテの目に、うっすらとブラックの全身を覆う蛍火のような光が映った。

「ムーンエナジーか!」

思わずたじろいだデーテを、ブラックは睨んだ。

それは、デーテへの怒りよりも、悲鳴を上げた不甲斐ない自分に対しての怒りだった。

「うおおおー!」

雄叫びを上げて、ブラックは拳を握りしめると、唇から流れてる血を拭うことなく、デーテに向かって飛んだ。

ムーンエナジーを纏った拳を、デーテに叩きつける。



しかし、ふっ飛んだのは、ブラックの方だった。

「フン!」

デーテは鼻を鳴らすと、地面に倒れたブラックを蹴り上げた。

「ほんの少し!ムーンエナジーを使えるくらいで、いい気になるな!」

「くそ!」

すぐに立ち上がったブラックに、デーテのパンチが炸裂した。

再びふっ飛んだブラックは、空中で変身が解け、

九鬼へと戻った。

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