天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「き、貴様!わ、わかっているのか!我の脳には、我が食べた人間の記憶が刻まれているのだぞ!今の攻撃で、何人かの人間の記憶が死んだのだぞ!」

デーテの言葉にも、ブラックは反応しない。

「き、貴様!」

ブラックは、手刀をつくる。

「真弓ちゃん!」

デーテの声が、変わる。

「ママを殺すの?」

ブラックは答えない。

ただ手刀が、真上の月の光を得て、さらに輝いた。

そして、デーテの剥き出しの脳味噌に突き刺した。

「うぎゃあ!」

残った脳味噌が、飛び散った。

ブラックは手刀を抜くと、また振り上げた。


「お、お姉ちゃん…」

今度は、一階で会った…この体の持ち主である少女自身になる。

「あたしを殺すの!助けてくれないの?」

「…」

しかし、ブラックは無言で手刀を振り落とした。

「お、お姉ちゃ…」

また脳味噌が飛び散った。

「や、やめろ!」

最後は、デーテの声になり、

「お前は、人を殺すのか!こいつらの記憶は、我に刻まれている!我を殺すことは、我の脳に刻まれた人間を殺すことになるのだぞ」



そのデーテの言葉に、ブラックは答えた。

「心配するな。あたしが、殺すのは…お前だけだ」


渾身の力を込めた手刀が、頭から股まで切り裂いた。

「お、お前は悪魔かあああ!」

デーテの断末魔の悲鳴が、病院の敷地内でこだました。


「その通りだ…」

ブラックは手刀を抜くと、

真っ二つになったデーテを見た。

「あたしは…お前達にとっての悪魔…」



ブラックは眼鏡を取ると、九鬼に戻った。

月の下で、死骸となったデーテの体が照らされ…、

灰と化していった。


< 1,321 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop