天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「うわああ!」

今まで何人もの人間を殺してきた男が、叫んだ。

「約束通り、この子に武器はない。安心するがいい」

確かに、少女は武器を持っていなかった。

ワンピースだけの体に、武器を隠しているようにも見えない。

しかし、男は恐怖した。

武器を持っているのにだ。

まるで、野生動物がいる檻に閉じ込められたような感覚がした。

刀だけでは、勝てないような気がした。


そんな男の心を見透かしたように、スピーカーから声がした。

「よければ…今からマシンガンでも、ご用意するがね?」

その言葉に、男を正気に戻った。

「舐めるな!」

男は自ら突進すると、動かない少女の頭上に向けて、刀を振り下ろした。

研ぎ澄まされた刀身に、血が飛び散った。


「す、素晴らしい!」

スピーカーが、歓喜の声を上げた。

少女の腕が、床に転がり…とめどもなく血が吹き出ていた。

少女は、口でワンピースを引きちぎると、自らの腕に巻き付け、止血した。

部屋のドアが開き、看護斑が飛び込んできて、床に転がる少女の左腕を素早く氷の入ったクーラーボックスに入れた。



勝負は一瞬だった。

左腕で刀を受けると、少女は男の首を手刀で突き刺し、切り裂いていた。

「野生動物は例え、腕をなくそうが、怯むことはない。いいんだ!いいんだ!それで、腕などすぐにくっ付けてやる。だが、腕を棄てる覚悟は、なかなかできやしないよ」

スピーカーの声は、震えていた。

「いい子だ。真弓は…」




「お爺様…」

少女は、床に溜まった自ら流した血を見つめ、呟くように言った。

「あたしの血も…みんなと同じで…綺麗だね」




九鬼真弓。

七歳の時…。

彼女は、闇の中にいた。

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