天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「お爺様!色がなくなったね。色がなくなることが、夜なの?」
九鬼には、自然の美しさはわからなかった。
だけど、色とりどりの個性がなくなったことは、理解できた。
そんな中、月だけが輝いていた。
「色か…。そうだね。色が個性かもしれないね」
才蔵は、隣に立つ九鬼がずっと月だけを見上げていることに気付いた。
「お爺様…。あれが、綺麗なの?」
すべてが、闇の暗さに負ける中…たった一つだけ輝く月。
「そうかもしれんな…」
才蔵は、灯りのついた町並みに顔を向け、九鬼にきいた。
「向こうも、光っておるがな?あっちの光が、どうだい?」
才蔵の問いかけに、九鬼は月から町へと視線を変えた。
しばらく町の灯りを見つめた後、九鬼は顔をしかめた。
「あっちは、自分勝手みたい。みんな…自分だけの為に、光ってる」
「そうか、そうか」
才蔵は満足げに、何度も頷き、九鬼の後ろに回ると、両肩に手を置き、
「真弓よ…覚えておきなさい」
「はい。お爺様」
九鬼は顔を上げ、才蔵を見上げた。
「かつて…この世界に、月はなかった。すべてが、闇に包まれていた。ある日…それを不憫に思った女神が、月を作ったのだ。人々が、闇の中でも迷わないように…」
「月を作ったの?」
「そうじゃ」
才蔵は頷くと、月を見上げ、
「誰に頼まれた訳でもない。女神の優しさでな」
一度目を瞑ると、才蔵は後ろから九鬼を抱き締めた。
「お前が今やっていることは、誰の為でもない。だが、誰かの為でもある。他が為に…」
ぎゅと抱き締め、
「月のような戦士におなり。誰の為でもない…自分の為でもない。闇を照らす存在におなり…。あの月のように…無償で…」
「お爺様…」
九鬼は、才蔵が泣いていることに気付いた。
「月のような…戦士になるんだよ」
今思うと、それが人としての才蔵の最後の言葉だったのかもしれない。
九鬼には、自然の美しさはわからなかった。
だけど、色とりどりの個性がなくなったことは、理解できた。
そんな中、月だけが輝いていた。
「色か…。そうだね。色が個性かもしれないね」
才蔵は、隣に立つ九鬼がずっと月だけを見上げていることに気付いた。
「お爺様…。あれが、綺麗なの?」
すべてが、闇の暗さに負ける中…たった一つだけ輝く月。
「そうかもしれんな…」
才蔵は、灯りのついた町並みに顔を向け、九鬼にきいた。
「向こうも、光っておるがな?あっちの光が、どうだい?」
才蔵の問いかけに、九鬼は月から町へと視線を変えた。
しばらく町の灯りを見つめた後、九鬼は顔をしかめた。
「あっちは、自分勝手みたい。みんな…自分だけの為に、光ってる」
「そうか、そうか」
才蔵は満足げに、何度も頷き、九鬼の後ろに回ると、両肩に手を置き、
「真弓よ…覚えておきなさい」
「はい。お爺様」
九鬼は顔を上げ、才蔵を見上げた。
「かつて…この世界に、月はなかった。すべてが、闇に包まれていた。ある日…それを不憫に思った女神が、月を作ったのだ。人々が、闇の中でも迷わないように…」
「月を作ったの?」
「そうじゃ」
才蔵は頷くと、月を見上げ、
「誰に頼まれた訳でもない。女神の優しさでな」
一度目を瞑ると、才蔵は後ろから九鬼を抱き締めた。
「お前が今やっていることは、誰の為でもない。だが、誰かの為でもある。他が為に…」
ぎゅと抱き締め、
「月のような戦士におなり。誰の為でもない…自分の為でもない。闇を照らす存在におなり…。あの月のように…無償で…」
「お爺様…」
九鬼は、才蔵が泣いていることに気付いた。
「月のような…戦士になるんだよ」
今思うと、それが人としての才蔵の最後の言葉だったのかもしれない。