天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「うわああ」
「きゃあああ!」

絶叫が、研究所内にこだました。

しかし、それは一瞬だった。

黒い糸に絡みつかれた人々は、すぐに落ち着きを取り戻した。

まるで、何事もなかったかのように…見えた。





「ウフフ…」

魔法陣が消え、糸を吐き出していた少女は、口を閉じると、見上げていた顔を下ろした。

「久々の…下界だ」

少女の目は血走り、声が変わっていた。

「月のやつらに、閉じ込められてから、どれ程たったのか」

話す口から、細長い舌がチロチロと何度も飛び出した。

「まあいい~。再び下界に、出れたのだ」

少女は自分の手を見つめ、血が流れているのがわかると、舌で舐めた。

「それに、若い女の体に入れることは…運がいい」

血を舐めながら、少女は目だけで、部屋を確認した。

すると、部屋の片隅で糸が噛みついて、繭のようになっている九鬼を発見した。

「おいおい…まだ、取り憑いていないのか?」

少女は、繭に包まれた九鬼に近づき、

「人間如きに、何を手こずって…」

手を差し出そうとした少女は、口から血を吐き出した。

「な!?」

絶句した少女の胸から、背中までを、

腕が貫いていた。

黒い腕が…。

「ば、馬鹿な…」

腕はすぐに引き抜かれると、繭を突き破り、

中から、黒い物体が飛び出してきた。

「き、貴様は!?」

血走った少女は目を見開き、その姿を確認しょうとしたが、

顔が真ん中からスライドし、少女は見ることができなかった。

繭から飛び出した者の手刀が、切り裂いたのだ。

鼻の上から、血を噴き出して倒れる少女に、背を向けると、飛び出した者は蹴りで、部屋の壁を破壊した。

廊下に出ると、部屋の前には血走った目をした研究員達が群がっていた。

九鬼であるはずのその者は、研究員達を確認すると、自ら飛びかかっていった。

血飛沫が、廊下に舞った。

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