天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「せ、成功したのか」

兜は一瞬で、事態の終息と、原因結果を理解した。

「魔を召喚させ…あれを見つけだせたのか…」

兜は、炎を従えているように見える人影を目を細めて、じっと見つめた。


かつて、才蔵は兜に語っていた。

月の戦士を復活させる方法を。

「無理だ」

それをきいた兜は、首を横に振った。

「その方法は、危険過ぎる!」

だけど、才蔵は口元を緩めるだけだ。

兜は声を荒げ、

「あわよく…戦士になれたとしても、周りは化け物ばかりだ!勝てるはずがない!」

「フン!」

才蔵は鼻を鳴らした。そして、兜に背を向けると、虚空を睨みながら、こう言った。

「周りにいるすべての魔を皆殺しにできないやつに、月の戦士を名乗る資格はないわ!」

才蔵は、振り返り、

「月の光は、すべてを照らす!ならば!月の戦士は、すべてを駆逐しなければならない!」

兜を睨みつけ、

「その程度もできない戦士ならば、いらぬわ!」




兜は炎の中から、燃えることもなく、平然とでてきた者を見据えた。

(この様子だと…魔は駆逐したか…しかし!)

兜は、恐れていた。魔を倒す力を得る事ができたとしても、闇に囲まれた人間が人間のままでいられるのか。精神的に大丈夫なのか。

兜は震える手で、着ている上着の内ポケットから銃をとり出した。

(し、試作品の…武器で勝ってるか)

兜はもしもの為に、ムーンエナジーを使う兵器を開発していた。


しかし、目の前にいるのは、そのムーンエナジーを使う戦士だ。

兜の額に、冷や汗が流れたとき、脳裏に才蔵の言葉がよみがえった。

(そんなに…やわに鍛えておらぬは、うちの孫は!)


炎の照り返しから逃れでてきた戦闘服を身に纏った戦士の瞳から、一筋の涙が流れたことに、兜は気付いた。





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