天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「当たり前だ!これ以上離れたら、見えないからな」

アイは、後藤の顔と被害者の遺体を順番に見ると、

「わかった」

頷き、また上着の中に隠れた。

「現場に来ないとわからないことが、多いんだよ」

後藤は、被害者に焦点を合わした。

「時間は?」

上着の中から、アイがきいた。

「死亡推定時刻は、午前3時だ」


「何秒見るの?」

アイの問い合わせに、

「1分だ」

後藤は口元を緩めた。

「分は、駄目よ!」

「いいから!やれ!」

アイの言葉を遮り、後藤は要求した。






「わかった」

少し間をあけて、アイは了解した。

その瞬間、後藤の目はこれ以上ないくらい見開き、さらに眼球が少し飛び出ると、血管が浮かんだ。


「うおおお…」

軽く唸りながら、

後藤は今ではない…

過去を見つめていた。


今は明るい犯行現場は、町の一角である為、街灯がある。


それなのに、後藤の視界は真っ黒だった。





「太陽の勇者を失った!だ、だから、次の希望の…ひ、光が必要なんだ!」

闇の中で、被害者と思われる者の声がした。



「月は…希望の光ではない」

いきなり、眩しい光が…後藤の視界を真っ白にした。


「うぐう!」

男が血を吐き出す音が…光の中でした。



「お、お…」

後藤には、何が起こったか…わからない。



「乙女ソルジャー…」





そこで、映像は終わった。

「う」

思わずよろけると、後藤は片足を地面につけた。

目が真っ赤に腫れ上がっている。



「これ以上やると、失明するよ」

アイが、少し怒ったような顔を出した。



空間の記憶を見ることができる。

それが、アイと契約した理由だった。

しかし、人の目を媒介に使う為…数秒しか見ることはできなかった。


「乙女…ソルジャーだと?」

後藤は痛む目を抑えながら、被害者の最後の言葉を繰り返していた。

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