天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
後藤は煙草を吸った。



今回の事件は、架空の話ではない。

実際に、人が死んでいるのだ。

「ありがとな」

後藤は、雑誌を木村に返した。

そして、煙草を吸殻で山盛りの灰皿に押し込んだ。


(テレビの人気キャラを真似ただけの愉快犯か…)

後藤は立ち上がった。

(しかし…あの会話)

男の発した言葉は、まさしく…

(太陽の勇者の話)


何か…意味があるはずだった。

小さな出版社に、ところ狭しとディスクが並んでいる為、歩きづらい。

少し苛つきを覚えた頃、木村の声が、後藤を止めた。


「そう言えば小さな出版社に、ところ狭しとディスクが並んでいる為、歩きづらい。。あくまで噂なんですけど」


後藤は振り向いた。

木村は言葉を選びながら、

「最近…乙女ソルジャーに、助けられたって…多いんですよ。テレビと同じ月影が、魔物から守ってくれていると…」



「何?」

後藤は、自分のディスクまで戻った。

木村は驚きながら、後藤に向かって話を続けた。

「それが、乙女ブラック…九鬼真弓!番組でも本名で出て活躍している人で…月影の原作者でもある人なんです」

「そ、そいつは!光輝いているのか?」

顔を近づけてくる後藤から、木村は身を反らしたながら、

「乙女ブラックは、光ってませんよ」




「!?」

後藤ははっとすると、先程返した雑誌に手を伸ばし、ページを捲った。




確かに、乙女ブラックは光っていない。

(だとすれば…他の色か)

後藤は、雑誌を閉じると、また木村に背を向けた。

(しかし!まずは…やつだ)

ディスクの間を歩きながら、後藤は九鬼から身元を探ることに決めた。


「後藤さん!」

また木村は呼び止めた。

「だったら、いいのがありますよ」

訝しげに振り返る後藤に、木村は歯を見せた。


後藤は顔をしかめた。


「数分前、事務所にメールが来たんですよ」

木村はいやらしく…さらに笑い、

「乙女ソルジャーに、興味ある出版社の方に、個別に話をすると」


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