天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
そう…人は、自由自由と叫びながら、

無知な奴隷なのだ。

何事も知ろうとしなければ…。

しかし、すべてを知れる訳がない。


この世の中の摂理や、権力…そして、利権の中には、知ることが、危険を伴う場合があった。






待ち合わせにしていたカフエに、後藤が着いた時、

そこはただの血の海と化していた。

監視カメラは破壊され、


それだけではなかった。

ビルの一階にテナントとして入っていたカフエは、

その上で働く…すべての人々が惨殺されていた。

それだけではない。

ビルが契約していた管理会社や、

防犯会社までもが、皆殺しにされていたのだ。


後藤は、無数の刺し傷からの出血死した木村の遺体を見て、絶句した。

そして、その近くに転がっていた…頭が踏み潰された男の子の死体に気付き、

嗚咽した。

犯人の残虐性が、わかった。



しかし、後藤はそんな惨劇を見ても、考えを変える気はなかった。




「アイ…」

遠くから、サイレンが聞こえた。

警察で時間を潰す訳には、いかなかった。

「いくぞ…」

相棒のアイを呼ぶと、後藤はテレポートをすることにした。

本当なら、ここで起こった過去を確認したかったが、

先日能力を使ったばかりだったことと、警察の接近の為に断念した。

「うん?」

後藤はテレポートする寸前に、木村のそばで落ちている…彼のカードを見つけた。

素早く、それを手に取ると、

後藤はテレポートした。


行き先は、決めていた。


月影を放映していたテレビ局。


日本地区の中心に建ているテレビ局の前に、テレポートした後藤は、会社の社員証を慌てて上着の内ポケットから取り出すと、

テレビ局の受付に走った。

普段なら、出入りの厳しい玄関に誰もいない。


いや、誰もいないじゃない。

誰も生きていなかったのだ。

ガラス張りのドアが開いて、中に入った後藤の鼻腔に、

血の臭いがこびりついた。

< 1,363 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop