天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「今さっきね」

女の言葉より、後藤はその顔を見つめ…凍りついた。

「だから…あなたも」

女の爪が、鋭さを増す。

全身から、血の匂いが漂ってくる。

「後藤!」

アイは後藤の後ろに回りながら、叫んだ。

「ごめんなさいね」

一瞬で、間合いを詰めた女の爪が、後藤の首に突き刺さる寸前、


「佐々木…様…」

後藤は呟いた。





その呟きに、佐々木は手を止めた。

そして、後藤が持つ剣を見た。

柄に刻まれた紋章を見て、佐々木は手を下ろすと、

そのまま…後藤の横をすり抜けた。




「ば、馬鹿な!!」

後藤は呪縛が解けたかのように、絶叫した。


「安定者だった!あなたが、どうして!」

後藤の手から…剣が落ちた。

神流はゆっくりと歩きながら、言葉を発した。

「あたしが…安定者だと知ってるのは、防衛軍の中でも、ごく一部だけ…」

「…」

後藤は振り向いた。

「あんたの顔に、見覚えはないけど…あたしの近くにいたと言うことね」

「佐々木様…」

後藤は、神流の遠ざかる背中を見つめた。

「かつての部下特典として…今回は、見逃してあげる。まだ…深くは知らないようだし」

神流の言葉に、

後藤ははっとした。

慌てて、上着のポケットをまさぐると、


一枚のカードを取り出した。

それは、先程…手に入れた木村のもの。

後藤は、発信履歴を検索した。

最後は自分だが…その前に登録されていない番号を、何度かかけていることを発見した。

後藤は震えながらも、リダイアルをかけた。



神流の方から、着信音が聞こえてきた。

神流はカードを出すと、電話に出た。

後藤は震える手で、カードを耳元に当てた。




「…で」

神流の声が、鼓膜を震わした。


「どうしたいの?」



後藤の手から、カードが滑り落ち、

床に激突する前に、粉々に砕けた。



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