天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「な」

いきなり、視界から消えたサーシャに驚き、サラは後ろを振り返った。

音を立てず、ただ横凪ぎに振るったドラゴンキラーが、

サラの左の角を切り裂いた。

「!」

絶句するサラに、

バイラは叫んだ。

(これが最後だ…戻れ!)

サラの角が、地面に落ちるのと、

サーシャが着地するのは、同時だった。

「クッ!」

サラは、折れた角を確認することなく、羽を翻すと、遥か上空に舞い上がり、

そのまま撤退した。




その様子を結界の中から、息を飲んで見ていた結界士や防衛軍の兵士は、

一呼吸おいてから、飛び上がって、歓喜の声を上げた。

「やった!」

「騎士団長を退けたぞ」

「我々の勝利だ!」

歓喜にわき、抱き合う兵士とは逆に、サーシャは至って、冷静だった。

サラの残した角を拾うと、サーシャは…サラが消えた上空を見上げた。

「あいつは、全力ではなかった…」

サーシャは、サラの角を握り締め、

「あいつは…明らかに、何かに気を取られていた」

サーシャは、角を黒い軍服のポケットにしまうと、結界とは反対側を歩き出す。

魔界の方へ。

「まだ…このレベルでは、勝てない」

サーシャはドラゴンキラーを構え、荒野の奥へ駆け出した。
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