天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「あ、あたしが、雑魚だとお!」

今の言葉で、梨絵は完全に頭にきたようだ。

女子生徒に向かって、突進してきた。

「だから…言ってるだろ」

女子生徒は、呆れたように肩をすくめた。


「あたしを!怒らせたことを後悔しろ!」

梨絵のパンチが、女子生徒の鳩尾に向かって放たれた。

「怒れば、怒る程!パワーが上がる!乙女レッドの特性を!身を持って、味わうがいい!」

梨絵のイメージでは、女子生徒の体を、

拳が貫いているはずだった。



しかし。



「な!」

梨絵は目を疑った。

コンクリートの壁を一撃で砕く…乙女レッドの拳を、



生身の女が、素手で受け止めていたのだ。


「そ、そんな馬鹿な!」

梨絵は、拳を戻そうとしたが、

信じられない程の力で掴まれ、びくともしなかった。

「は、離せ!」

乙女レッドの体を炎が包み、燃え盛る拳が火の玉のように、燃え上がった。

その瞬間、

女子生徒は手を離した。


「大人しく離せば…手が焼けただれなかったものを!」

梨絵は笑いながらも、自らも気付かぬ内に、後方にジャンプし、女子生徒から距離を取った。

そして、相当な火傷を負ったであろう…女子生徒の手を見た。

「!?」

女子生徒の手から、少し湯気が出ているくらいで、火傷をしていない。

「な!」

そして、梨絵は気づいた。

自らの拳が凍っていることに。

「そ、そんな馬鹿な!」

梨絵は、炎を纏う全身の中で、凍りついている拳に、唖然とした。

「あ、あり得ない!」

無傷の女子生徒を見ながら、梨絵は言い様のない畏怖を心の底では感じながらも…乙女レッドの力を得たという傲慢さが、

梨絵を前に押し出した。


「少し魔法が使えるからと!調子に乗るなよ!」

乙女レッドの全身がさらに燃え上がると、拳の凍りが溶けた。

「乙女レッド!恥じらいのフャイアキック」

火の玉と化した乙女レッドが、スカートを翻しながら、飛んだ。
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