天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「フン」

響子は軽く鼻を鳴らし、

「それは、私が前の体の時だ」

ジャスティンを睨んだ。

「そうでしたね」

ジャスティンは苦笑すると、軽く頭を下げた。



「?」

カレンには、2人の会話の意味がわからない。

その様子に気づいた響子が、ジャスティンに言った。

「お前の弟子に、説明してやれ」


「了解しました」

慇懃無礼気味に頭を下げたジャスティンは、カレンの方を向いた。


「この方は、人間であって…人間とは違う。自分の記憶、意識、特殊能力を…自分の孫に転送して、生き続けている長老だ。そして、こことは違う世界から来られた」

「異世界?」

カレンは、響子を見た。

普通の生徒にしか見えない。

下手したら、自分より若く見える。

カレンは、気を探ろうとしたが…まったく反応がなかった。

一般人と同じ…身体能力に思えた。


「レベルを晒す馬鹿がいるか!」

響子は、カレンを一喝した。

そして、ジャスティンの方を見て、

「人と違うは…もう当てはまらないな。この世界に来て、この世界の男と交わり…転生を繰り返している内に、肉体は人間そのものになってしまった」

響子は悲しげに笑うと、

「今残っているのは、過去の記憶と人の心を読む能力だけだ」

ジャスティンからも視線を外し、屋上から周囲の町を見回した。

ジャスティンはしばらく、響子の顔を見つめていたが、

おもむろに口を開いた。


「どうして…この学校に?」

ジャスティンの質問に、響子はあるものをスカートのポケットから取り出した。

「これは!?」

響子が示したものは、乙女ケースだった。

ブルーの乙女ケース。


「私のもとに来たのさ」

響子は、乙女ケースを見つめながら、

「これの所有者になったからだろうが…久々に、結城から連絡があってな」


「結城?」

カレンは眉を寄せた。

「先程…お前が戦った…乙女ダイヤモンド、乙女レッドだった女達の父親。そして」

ジャスティンは、響子に頷き、

「もと防衛軍…日本地区の司令官だ」
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