天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「やつは…防衛軍の再編を目指している」

ジャスティンの説明の途中で、響子が口を挟んだ。

「月影を主力にした…新たなる防衛軍を、やつは作るつもりだ。お前を差し置いてな」

響子は、ジャスティンに笑いかけた。

ジャスティンは肩をすくめて、見せた。


「各月影の戦士達を倒し…すべての乙女ケースを集めた者は、女神の力を得ることができる。それは、まさしく神の力」


「すべての乙女ケース…」

カレンは、自分が持つ赤い乙女ケースを見つめた。


そんなカレンをじっと観察するように凝視してから、

響子は持っていたブルーの乙女ケースを、ジャスティンに投げた。

「!?」

片手で受け取ってから、ジャスティンは響子を見た。

響子は背伸びをし、

「私は、戦いが似合わない。お前に預けるよ」


ジャスティンに背を向けた。

「悟(サトリ)さん…」

ジャスティンは、少し戸惑ってしまった。

「やつらは…月影の謎を調べる同胞達を殺している」

「!!」

カレンは顔をしかめた。

「人殺しは、この世界の最高の罪になるはずだ」


「そうねえ〜。裁かれる方にはね」

響子は、皮肉ぽく言った後、ジャスティンに向かって振り返った。

「あんたが持ってるなら、やつらも手を出せないはずよ。あんたなら、乙女ガーディアンでも勝てるはず」


響子の言葉に、ジャスティンは口許を緩めた。

「どうでしょうね…」



カレンと響子は、乙女ケースを持つジャスティンの腕が激しく揺れているように感じた。

ジャスティンは腕に力を込めた。

手の甲に、血管が浮き出ていた。

「どうやら…勝手に、譲ることはできないみたいですね」

まるで、石鹸が飛び出すように、

ジャスティンの手から飛び出した乙女ケースは、

響子のもとに戻った。


「な!」

思わず掴んでしまった響子は、絶句した。


「やはり…女であるか…。それとも、乙女ソルジャーの資格がある者しか、譲り受けることはできないようですね」

ジャスティンの言葉に、

響子の手が震えた。
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