天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「ご、ごめんなさい!」

美亜は立ち上がると、色紙を脇に挟み、

廊下に転がった眼鏡を素早い動きで取り上げた。

そして、眼鏡拭きでレンズを拭くと、

「この眼鏡…度が合ってなくて」

ぺろっと舌を出した。

明らかに、眼鏡をかけてない方が動きがよかった。

「では…ご心配をおかけしました」

眼鏡をかけ、頭を下げると、

またふらつきながら、美亜は廊下を歩いていった。


「気をつけてね」

九鬼は見送りながら、首を捻った。

「おかしな子ね」

注意するのもなんだし…九鬼は、美亜が廊下を曲がるまでは見守った。



そんなことをしている間に、

夕陽は沈んだ。



一気に辺りは暗くなり、

上空には、月が昇った。







「月影の時間よ」

校長室から出たリオは、にやりと口許を緩めた。

「はい!御姉様」

後ろから、梨絵が続いた。


「月影の力は…すべて、私達のもの」

リオと理恵が歩き出すと、後ろから数十人の男子生徒が、どこからか姿を現した。

「やつらから…乙女ケースを奪うわよ!」

リオの言葉に、後ろでついてくる男子生徒達は、ポケットから黒い布を取り出した。

それは、マスクだった。

男子生徒達は一斉に、頭に被ると、ナイフを取り出した。

「行け!我が僕…シャドウ達よ!乙女ケースを奪うのよ」

「は!」

シャドウとなった男子生徒達は、廊下を走り出した。

リオ達を追い越し、散りじりになって、ターゲットを探す。

「敵には死を!失敗すれば、己にも死を!」

リオはシャドウ達の背中に、叫んだ。


「敵には死を!失敗すれば、己にも死を!」

「敵には死を!失敗すれば、己にも死を!」

「敵には死を!失敗すれば、己にも死を!」


シャドウ達は各々に、そう呟きながら、廊下を走る。


彼らのターゲットは勿論、

乙女ケースを持つ…

九鬼とカレンであった。
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