天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「私は行かなければならない…」

放課後になって、カレンは再び屋上にいた。

またジャスティンに呼び出されたのだ。


「どこへ?」

カレンは、スカートのポケットに両手を突っ込みながら、きいた。

ジャスティンは、上空に姿を見せた月を見上げながら、

「月影も大切だが…それ以上に、重要なことがある」

思い詰めたような表情になった。

「それは、何です?」

いつもなら、重要なことははぐらかすジャスティンは、月からカレンへと視線を移すと、

「…魔王の封印を解く…鍵の存在が確認された」

「魔王の封印を解く鍵?」

「そうだ」

ジャスティンは頷くと、今度はカレンに背を向けた。


「詳しくは、わかっていない。しかし…波動が魔王と酷似しているらしい。まだ微弱で、近くまで接近しないと、魔敵レーダーにも感知されないようだが…」



「ということは…魔王の眷族?」

カレンは考え込んだ。


「その可能性が、大きい。しかし、魔王の血を引く者は、アルテミアしかいない。だが…アルテミアではないようだ」

「それじゃ…一体」

カレンの知るところでは、アルテミアに兄弟はいない。

姉と言われた…ネーナやマリーは、魔王が創造した娘達だ。

アルテミアのように、女に産ました子供ではない。


「その波動の側に、もう1つの魔敵反応を確認できた。それも、一瞬だったが…その波動は、ある魔物と一致した」

ジャスティンは目を細め、

「しかし…その魔物は、死亡を確認されている」




「王の波動に、付き添う…魔物…」

カレンは、ジャスティンの言葉を待った。

「その魔物の名は…」

ジャスティンは目を瞑り、

「フレア…。炎の騎士団長…リンネの妹」

「騎士団長!」

カレンは目を見開いた。


騎士団長。

今、カレンが戦い…勝つことができないと思われる存在だった。


ジャスティンは目を開けると、振り返った。


「フレアは…赤星浩一君と魔王レイとの戦いの最中…死亡した…はずだった」
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