天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「な!」

頭上の気配を感じ、後方にジャンプしたカレンがいた場所に、

日本刀が突き刺さった。


「十夜様!」

男達から、歓声が上がった。

「貴様らは、入口を固めていろ!貴様達では、太刀打ちはできない」

校則違反の短いスカートに、金髪の頭を振り乱して、

十夜と言われた女生徒は、日本刀を床から抜くと、刃をカレンに向けた。

「山本可憐!いや、カレン・アートウッドよ。伝説の勇者を親族に持つ!貴様の力見せてみろ!」

十夜は日本刀を振り上げると、

カレンに向かってきた。


十夜の踏み込みを見て、余裕でかわせるとふんだカレンは、

数秒後…、

予想だにしない出来事に唖然とした。


「ほお〜」

十夜は感心したように、笑った。

「な」

カレンの髪の先が斬られ、風に舞った。

「無意識で、避けるとは…流石!鍛えているな!」

十夜は振り抜いた日本刀を持ち変え、

刃を上に向けると、今度は切り上げた。

「クッ!」

その攻撃は、余裕で避けたカレンは日本刀の軌道を潜り、拳を十夜の鳩尾に叩き込んだ。

「調子に乗るな!」



くの字に曲がるはずの十夜の体は、びくともしなかった。

カレンは咄嗟に、日本刀の届かない間合いまで離れた。

「てめえ」

拳の痛みが、カレンに告げていた。

「人間ではないな」


カレンは、日本刀を持つ十夜を睨んだ。

「人間だよ。俺はな」

十夜は着ていた制服を、左手で引きちぎると、

上半身を露にした。

下着を着けた肉体の殆どが、鋼でできていた。

「だけど…体の殆どは、肉でできていないがな」

十夜はにやりと、口元を緩めた。

「日本地区の伝統…からくりと、ヨーロッパ地区の鍛金術で育成された…俺の体!」

十夜は日本刀をゆっくりと、カレンに向けた。

「科学の世界では、サイボークというらしいな」

「…」

カレンは、十夜の体を凝視した。

「俺の名は、十夜小百合!この体の為、月影にはなれないが…月影を超える戦士になる者だ」
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