天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
カップの中から、湯気が立ち上っていた。

武骨な…ただ大きいだけのカップを傾け、中身を飲む白衣の男を、

結城哲也はただ腕を組み、見つめていた。


白衣の男がカップをテーブルに置き、軽くため息をついたのを確認すると、

哲也は口を開いた。


「十夜小百合…。サイボーグとしての初陣は、彼女に負けたようですな」

哲也は、校長室の隣にある応接室に、男と2人でいた。

「それも…あなたの知り合いである…女に」

哲也は男の目をじっと凝視していたが、

男はただ湯気を見つめていた。

「彼女は何者です?デスペラードの復活にも、関与していると言われてますが」

哲也の言葉に、一度は指を絡めた取っ手から指を離すと、

男はフッと笑った。

そして、徐に口を開いた。

「デスペラード…ならず者という意味ですね。私達の世界で、イーグルスというバンドの曲にもありましたよ。デスペラード…それが、闇の女神の真の名前ですかね」

男は口元に笑みを浮かべながら、取っ手を使わずに、カップを握りしめた。

「何が…言いたいのですかな?兜博士」

そのまま、まだ熱いコーヒーをごくごくと飲み干す男の名は、

兜又三郎。

九鬼と同じく異世界から来た…男である。

「いやあ〜」

兜はカップを置くと、頭をかいた。

別名マッドキャベツとも言われる兜のボサボサの髪が、さらに乱れた。

「この世界は、我々の世界と似ているが…まったく違う。その一番の違いは、魔物…そして、動力としての魔力!」

兜は頭をかくのを止め、

「それは…私の世界が使う燃料より、燃費がよく…無駄がない。さらに、有害物も、環境破壊も起こさない。素晴らしい力だ」


「…」

哲也は、論点がずろていると思っていたが、

敢えて口を挟まなかった。

「しかし…この世界は、本当に異世界なのだろうか…」

兜は腕を組んだ。

「確かに…今の流れは違う。しかし、似てるものが多すぎる」
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