天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「どうして、起こしてくれなかったんだよ」

二階から、階段を降りながら、

僕は母親を睨んだ。

「起こしに、いったわよ。でも、起きないんだもの」

母親は、妹に味噌汁をだしていた。

「モード・チェンジとか、叫んでるし…」

「アニメの見過ぎよ」

妹の綾子は、ご飯を食べながら言った。

「兄貴。夜中…ずぅと叫んでたんだから、うるさくて、うるさくて」

綾子の部屋は、僕の隣だ。

「大丈夫なの?何か、悩みでもあるのかい?」

「あるわけないじゃん!兄貴に。ただのオタクよ」

綾子はそう言うと、席を立ち、鞄をつかんだ。

「気をつけて。いってらっしゃい」

「はぁ〜い」

綾子は、テーブルにつく僕をちらっと見て、

「兄貴!ピアスなんてしてるの。似合わねえ〜」

そう言うと、顔をしかめたまま、学校へと向かった。

「え」

僕は驚き、

恐る恐る耳を触った。

「指輪もしてるんだ」

母親が言った。

「え」

僕は、耳を触ろうとした左手を見た。

左手の薬指に、

指輪はあった。

「彼女でもできた?」

少し嬉しそうな母親の問いに、僕は首を横に振った。

「そうよねぇ〜。でも、色気づいたということか。ついに、息子が!」
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