天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「待って!」

九鬼は手を伸ばし、優の肩を掴もうとした時、

「チッ」

慌てて、腕を引っ込めた。

机の下から、光の輪が飛び出してきたからだ。


九鬼は黒の乙女ケースを取り出すと、 光の輪を叩き落とした。


光の輪は空中で割れ、光の欠片になり…消えた。



「乙女スフラッシュか」

九鬼は苦々しく、光の輪が消えた空間を睨んだ。


乙女スフラッシュ。

乙女グリーンの必殺技であり、ノコギリ状の回転する光の輪で、相手を切り裂く…恐ろしい技だ。

ホバーリング機能がついており、罠にも使えた。


「最初から、仕掛けていたのか?」

九鬼は、乙女ケースを握りしめた。




「うん?」

突然、後ろから殺気を感じ、九鬼は振り返った。


そこには、窓しかなく、

その向こうにはグラウンド…そして、すべてを覆う闇が見えるだけだ。

そして、上空には…。


九鬼は胸騒ぎがして、窓へと走り寄った。

そして、窓を開けると、顔をだし、上空を見上げた。

「なっ!」

九鬼は絶句した。




いつもの如く、月はあった。

しかし、その月は、


瞼を開け、

巨大な目玉を下に向けていた。



明らかに、九鬼を見つめていた。


「目玉だと!」

九鬼は、そんな月を見たことがなかった。


「あり得ない!」

九鬼はサッシに手を置くと、窓から飛び降りた。


「装着!」

黒き光が九鬼を包み、乙女ブラックになると、地上へと降り立った。


そして、もう一度空を見上げたが、

「!?」

月は、元に戻っていた。

大きなクレーターは目視できるが、

目玉はない。


「見間違いか?」

訝しげに、月をしばらく見つめていたが、もう変化はない。

変身を解こうと、眼鏡のフレームに手を伸ばした時、

九鬼は、横合いから攻撃を受けた。


「な!」

ふっ飛んだ九鬼は、グラウンドの中央まで転がった。


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