天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「な、なんだ?」

九鬼は転がりながらも、冷静になり、

状況判断に、頭をフル回転させた。

攻撃されたのは、人の死角だった。

それに、人体の柔らかいところを、ピンポイントで突いていた。

乙女ソルジヤーになっていなければ、やられていた。


九鬼は、突かれたと同時に、衝撃が貫く方向に、ジャンプしていた。


転がっているのも計算だった。

衝撃を散らし、さらに回転で力を溜めていた。


何度目かの回転で起き上がると、九鬼は足で土を蹴り、

まるで弓矢のように、襲撃された場所に向かって、飛んだ。

ルナティックキックの体勢で、空中から攻撃した敵を探すが、

見当たらない。

「何?」

そこまでの一連の動きは、ほんの数秒だ。

乙女ブラックのスピードが、ほぼカウンターのような動きにさせたはずだった。

しかし…。

自分が立っていた場所に、着地した九鬼は辺りを見回したが、

誰も見つけることはできなかった。







「さすがね」

グラウンドと校舎を挟んで、反対側にある廊下を、

佐々木神流が歩いていた。

口元を緩めると、神流は音を立てずに、廊下を滑るように疾走した。

そして、大月学園の一番奥にある部屋の前で止まった。

ここで、行き止まりである。

分厚い一枚板の扉を開けると、

学校には不似合いな長テーブルが、部屋の奥まで伸びていた。

豪華なテーブルクロスに、豪勢な料理。

そのテーブルの奥には、結城哲也が座っていた。

「ようこそ!我が組織に」

哲也は立ち上がり、頭を下げた。

「元安定者である…あなた様を、心から歓迎致します」
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