天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「チッ」

軽く舌打ちすると、九鬼は眼鏡を外し、変身を解いた。

先程のダメージはない。


周りを確認してから、

今度はため息をついた。


一連の出来事に、対応できていない自分がわかったからだ。



(月影は引き合う)

九鬼は、真上の月を見上げた。

満ち欠けていようが、月は月だ。

九鬼の世界と変わらない。

(月は美しい)

じっと見ていると、心が奪われそうになる。


(フッ)

九鬼は、視線を月から外すと、歩き出そうとした。




(うん?)

九鬼は、足を止めた。


月から、視線を外す途中…

何かが目線の端にいたのだ。

つねに、周囲を気にしていなければ、

意識できない程の一瞬。


「な!」

九鬼は振り返った。

目の端にとらえた…白い人影。

確か、校舎の時計台の上にいたはずだ。


九鬼は一回転したが、そんな人影はない。


時計台の裏に、隠れたかもしれない。


そう思った九鬼は、乙女ケースを突きだした。

「装…」

再び変身しょうとした時、

九鬼は突然目の前が、暗くなったことに気づいた。


はっとして、九鬼は頭上を見上げた。



「!?」

九鬼は目を見開いた。


遥か上空に浮かぶ影。


影は、巨大な翼を広げ、月明かりが地上に落ちるのを、遮っていた。


影は翼を羽ばたかせると、さらに上空へと上がっていた。


月と同化したように、小さく見えなくなった瞬間、

九鬼に向かって、一枚の羽が落ちてきた。


九鬼は、それを掴んだ。


白く…真珠のように輝く羽を見つめ、

九鬼は呟いた。



「天使…?」

九鬼は今まで、悪魔のような魔物に会ったことはあった。


しかし、天使は始めてだ。

まあ…悪魔がいたら、天使もいるだろう。

しかし、


九鬼は、気になったことがあった。

上空に消え去った天使の体を、

乙女ソルジャーの戦闘服に似たものが包んでいたのだ。


「白い…乙女ソルジャー」

九鬼は、羽を握り締めた。

「あり得ない!」
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