天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「しかし…そのあり得ないことが、世界を変える場合がある」

今度は、後ろから声がした。


九鬼はもう驚かない。

ゆっくりと、振り向いた。



「あなたは?」

そこに立つ…1人の女に、九鬼はきいた。


「フッ」

女は口元を緩めると、手を突きだした。


「な!」

巨大な鈍器で殴られたような衝撃を受け、

九鬼はふっ飛んだ。


「こ、これは!?」

九鬼が体勢を戻すより速く、

突きだしたままの女の手にピンクの乙女ケースが、出現した。


そして、


「装着!」

女が叫ぶと、ピンクの光が女を包んだ。



光が止むと、

乙女ピンクが出現した。



「乙女ピンク!?」

驚いた九鬼の体が、中に浮かんだ。

乙女ケースが消えた女の手が、上に上がるにつれて、

九鬼の体は上がっていく。

「サ、サイコキネッシスか…」

九鬼は、女の能力を理解した。


「フン!」

女の指が開くと、九鬼の両腕も開き、

まるで十字架にかけられているような格好になった。


「お前の力…貰う!」

女の左手に、ライフル銃が握られた。



「ク!」

九鬼は、顔をしかめた。

動けない体勢で、ライフルを撃たれたら、

即死は免れない。

何とか動こうとすると、指一本動かない。


「我が王国の再建の為に」

女はライフルの照準を、九鬼の額に合わせた。

「死ね!」


屋上近くまで、浮かんだ九鬼に向けて、女は引き金をひこうとした瞬間、

「チッ!」

女は舌打ちした。

銃口を、右横に変えた。


「遅い!」

いつのまにか、女の間合いに入った影が、左手でライフルの銃身を受け止めた。

そして、拳が女の脇腹にヒットした。

「!」

女は体を曲げながら、ふっ飛んだ。

「さすがだな」

拳を叩き込んだのは、カレンだった。

カレンは、目を細めた。

ふっ飛んだが、すぐに姿勢を正し、

カレンを睨む乙女ピンクに、ダメージはなかった。

「あたしの拳で、砕けないなんて」

カレンは、その防御力に感心した。

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