天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「!?」

必殺技の体勢に入っていた九鬼に、向けられたのは、

銃口だった。


それも、ライフルの長身ではなく、マシンガンの銃口だった。

「これは、よけれるか!」

カルマは九鬼に向かって、銃弾の雨を降らした。

数えきれない程の銃弾は、乙女ブラックのスピードを持ってしても、よけれないと、

カルマとカレンは思った。


しかし、

九鬼は避けることなく、両手を突きだすと、

円を描くような仕草をした。

手が光輝き、その軌跡にも光の道を作った。

道は一瞬で、九鬼の前方を被う程大きくなった。

そして、銃弾を弾き返すと、

九鬼はジャンプした。


「何!?」

驚いたカルマの目の前に、九鬼の体が舞った。


「ルナティックキック」

銃弾を弾き返した光は、九鬼の爪先に、集束された。

「零式!」

体を丸め、空中で足を突きだす。

「く、くそ!」

カルマは左手を、九鬼に向けた。

残りの体力のすべてを込めて、念動力を九鬼に放った。

流石の九鬼も、空中では避けることが、できない。

カルマは、九鬼の体を弾き飛ぶと確信をした。

にやりと笑いかけたカルマの口元が、凍り付いた。


カルマの目の前で、爪先を突きだしたままの九鬼が、

空中で停止していたからだ。

「な!」

絶句するカルマは、次の瞬間、

死を覚悟することになった。


空中で静止ししながら、九鬼の爪先から光が、

九鬼を包むように放たれ、

渦を巻くように回転しだしたのだ。

「ルナティックキック…」

そして、爪先を支点にして、九鬼も回転し出した。


「三式!」


まるでドリルのようになった九鬼の全身が、

カルマが放っている念動力を掘り進み、

貫いた。


「あああ」

迫り来るドリルのような爪先に、

カルマが絶望を感じた瞬間、

何かが横から飛び出して来て、カルマを突き飛ばした。

「きゃあ!」

地面に転がったカルマのいた場所に、屈強な体躯の男が立っていた。

「カルマ様は、やらせん」

笑った男の鉄板のような広い胸板を、

九鬼の蹴りが貫いた。
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