天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「闇の居場所?」

九鬼は眉を潜めた。

「フン!」

老人は、九鬼を見下ろした。

その間に、カルマを抱えた女達はジャンプし、

校舎を飛び越えた。

そして、彼女達を守るように、九鬼の周りにいた者達もジャンプした。



「なんだ」

状況が飲み込めずに、攻撃を躊躇っていたカレンは、

影達がいなくなるのを見送るしかできなかった。


「九鬼!」

カレンは、老人と対峙する九鬼に叫んだ。





「そこは、どこにある?」

九鬼は、老人を睨んだ。

「言わずとも、貴様ならば、わかるはずだ」

老人は口元を緩めた。すると、背中から烏を思わす黒い翼が、

皮膚を突き破って飛び出した。

老人の数倍がある巨大な翼が、羽ばたくと、

突風が巻き起こったが、

九鬼とカレンも、それくらいではびくともしない。

ただ髪が、風に靡くだけだ。


「また会おう。闇夜の刃よ」

老人は一瞬で、数十メートル上空に浮かぶと、月の明かりから消えた。


その様子を苦々しく見ていたカレンが、軽くキレた。

「おい!」

つかつかと、九鬼に近づくと、

老人の去った空を見上げている九鬼の前に立った。

「今のやつらは、何者だ!それに!」

カレンは、蒸発して消えた男の欠片があったところに、視線を落とした。

「今のは、なんだ?」



人にヒビが入り、砕けるなど聞いたことがなかった。

それに、翼が生えた老人も気配だけなら、普通の人間と変わらなかった。

(少し…何かが、混じっていたが)

数秒、考えてしまったカレンの思考を読んだかの如く、

九鬼は口を開いた。

「今の人間達は、闇に侵されている」


カレンは我に返ると、九鬼の方に視線を向け、

「魔獣因子みたいなものか?」


「違う」

九鬼は首を横に振り、

「魔獣因子は、もともと魔物になっただろう人間が、目覚めたもの。それは、あたしの世界にしか存在しない。今のは…」

九鬼も地面に目をやると、

「後天的に、魔に侵された…取りつかれたではなく、病気に近い」
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