天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「どうして?」

なぜ…こんなところにいるのか、

美亜自身にもわからなかった。


だけど、

そんな深く考えるたちではなかった。

すぐに、気を取り直すと、

スキップしながら、フェンスの裏から消えた。





「な」

しばらくして、プレッシャーが消えたカレンは、

その場で崩れ落ちた。

全身にびっしりと、汗をかいていた。

「はあはあはあ」

激しく肩で息をしながら、カレンは目の前にあるグラウンドの土を、指で抉った。

「い、今のは…」

プレッシャーから自由になっても、カレンの緊張が取れることはない。




「く、くそ!」

カレンは、抉った土を握り締めた。

前に同じようなプレッシャーを受けた時、

カレンは逃げだしてしまった。

今回は、


逃げ出すことはなかった。

だが、


それは、

逃げ出さなかったではなく、

逃げれなかったのだ。


「あたしは…今まで、何をしてきたんだ!」

握り締めた拳で、地面を叩いた。


あの日、女神から逃げたあの日から、

カレンは自らを鍛える為に、修行をしてきた。

なのに、

何も変わらなかった。

プレッシャーに動けなかった。


しかし、カレンは知らない。

そのプレッシャーを与えた者が、

女神以上の存在であることに。







「どうなさいました?」

校舎の奥の部屋で、グラスを傾けていた哲也は、

目の前にいる神流の様子が変わったことに気付いた。
目を見開き、明らかに震えていた。

神流の持つグラスの中にあるワインの表面が、揺れていたからだ。


「いえ…何でもないわ」

神流は哲也に笑顔を返すと、グラスに口をつけた。


中身を飲み干しながら、

神流は思考を巡らした。


(今…一瞬、感じたのは、神レベルの魔力。それも、トップクラスの)

神流は冷静を感じながらも、脇に流れる冷や汗を感じていた。

(誰だ?)


神流は、その一瞬の反応に、

一抹の不安を抱いてしまった。

これからの未来に。
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