天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「闇をばらまいたのか!」

九鬼は、拳を握りしめた。

「ククク…。でも、心配いりませんよ。普通に心が、健康な人間には、憑依できません。そう…心が病んでなければ…大丈夫ですよ」


タキシードの男の台詞に、九鬼はキレた。

「ふ、ふざけるな!」

乙女ブラックの全身が、輝き…ムーンエナジーの波動を周囲に飛ばした。


見えない細菌と同じくらいの大きさの闇の粒子が、吹き飛んだ。


「無駄ですよ。ここだけに、闇がある訳ではございませんから」

タキシードの男の声は、明らかに笑っていた。

「クッ!」

「あなたのできることは、すべての月影の力を得て、結界内に充満した闇の粒子を消し去ることですよ」

「貴様!」

「間違っても、闇を排除する前に、結界を消してはだめですよ。なぜなら、結界の外の人間にも、被害が出ますからあ〜!あははは!」

タキシードの男の声は、

笑いながら、フェードアウトしていった。


「クソ!」

タキシードの男を追いかけたかったが、

九鬼は怒りをしずめようと、一度深呼吸をした


今、やるべきことは、闇の繁殖を抑えること。

「トゥ!」

九鬼は気合いとともに、上空へとジャンプした。

月の下で、九鬼は結界の広さを確認した。


大月学園を中心にして、半径五キロ程が、結界で包まれていた。

ドームのような形をした結界を確認すると、

一度地面に着地し、

もう一度ジャンプした。

今度はさらに上空…町中を見下ろせるくらい上にある結界の天辺まで。

そして、結界に張り付くと、月を見上げた。


「月よ。あなたの力を借ります」

九鬼は目をつぶり、力を練り始めた。

ムーンエナジーが、乙女ブラックの全身を包み、

さらに外に向けて放射する。

九鬼は頭の中で、イメージした。

ムーンエナジーが、結界内に充満するイメージを。

「お願い!月よ!」

九鬼は結界の天辺から離れると、地面に向かって落下しながら、

ムーンエナジーを放出した。


「闇を照らして!」
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