天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
日が沈んだ町の上空に、太陽のような光る球体が、突如出現し、

結界内を昼間の如く、照らしたが、

不思議と、目をやられた人間はいなかった。




「クッ!」

地面に着地するまでの数秒。

光は結界を満たし、消えた。

足から着地した瞬間、九鬼の変身は解け、

顔をしかめながら、崩れ落ちるように、地面に両手をついた。


どうやら、着地の瞬間、

変身が解けるのが数秒だけ早かったようだ。

少し足を捻ってしまった。

「ははは」

背中で息をしながら、九鬼は辺りの匂いを確認した。

「何とか…結界内に満ちている…闇は、消滅できたようね」


今のムーンエナジーの放出で、これから闇に侵される人は減るだろう。

しかし、もう感染している人間には…ある程度のダメージは与えたかもしれないが、

もとに戻ることはない。

いつから、闇に汚染されていたのかは、

九鬼は知らなかった。


「そうだった…」

九鬼は痛めた足を庇いながら、立ち上がった。

「いかなくちゃ」

そして、ゆっくりと歩き出した。


月が出ていれば、力が尽きることのない…乙女ソルジャーであるが、

先程の許容量をこえたムーンエナジーの使用により、

今夜はもう…乙女ブラックになることはできなかった。

しかし、九鬼は歩く足を止めない。

行かなければならない場所があるから、

倒さなければならない敵がいるから、

守るべき人がいるから。


それは、

乙女ソルジャーの使命感ではなく、


九鬼真弓という人間の


生きる理由だからだ。



例え、五体満足でなくても、

九鬼が止まることはない。

九鬼は、ムーンエナジーの放出をした後も、変わらない闇の匂いを発しているところに向かって、歩き出した。



なぜなら、そこには、

闇だけでなく、

乙女ソルジャーもいるからだ。

「早くしなければ」

九鬼は痛む足を引きずりながら、

歩き続けた。
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