天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
蹴りを放った格好で止まっていた九鬼の足下で、ピンクの乙女ケースは止まった。

九鬼は足を下ろすと、乙女ケースを気にすることなく、

カルマに向かって歩き出した。



「く、くそ…」

カルマは何とか、立ち上がったが、

口から血が溢れた。

どうやら、さっきの蹴りで、内臓のどれかが破裂したらしい。


「あ、あたしは…」

カルマは血を拭うことなく、近付いてくる九鬼を睨み付けると、

「アルテカ王国の戦士…」

こめかみ辺りに指を当て、力を込めた。

「最強の戦士だ」

そして、指先に集中した念動力を、

まるでレーザー光線のように細くすると、

九鬼の眼鏡に向かって放った。


「…」

一瞬、手で受け止めようとしたが、九鬼はそれを止めた。


光線は、九鬼の眼鏡を当たった。


空中に舞う眼鏡。


「やった…」

カルマはにやりと笑った。


乙女ソルジャーもガーディアンも、眼鏡を外せば、変身が解ける。

あのおかしな戦闘服が消え、普通の肉体に戻れば、勝機があるばすだ。


「死ね!」

カルマは両手を突きだすと、サイコキネッシスを放った。




「無駄だ」

タキシードの男は、笑った。


「海に放水しても、意味がないように…」


見えないサイコキネッシスの力は、確実に九鬼に当たっているはずだが、

九鬼の歩みは止まらない。

「お前達…貧弱な人間が」


驚き、目を見開くカルマに向かって、九鬼はノーモーションで飛んだ。


「神に勝てるか!」

タキシードの男は、天井に向かって叫んだ。





「え…」

カルマは理解できなかった。

ぐるぐると視界が回る。

体が軽くなったように感じた。

天井が床が…何度も視界の中を往復する。


「ソリッド…」

床に激突する瞬間、視界が真っ暗になったが、

カルマの目は、アルテカ王国の同士ソリッドの顔を映した。
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