天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「逃げなくてもいい」

バイラは笑い、明菜を片手で差し出した。

「明菜!」

眠っている明菜は、死んだようにピクリとも、動かない。

「心配しなくていい。彼女は、無理やり、この世界に連れて来られた為、意識を失っているだけだ」

「明菜を離せ!」

「離すさ」

バイラは、明菜を僕に投げた。

「うわああ」

ブレザー姿の明菜の体が、宙に舞う。

落とす訳にはいかない。

何とか、両手でキャッチした僕は、バイラを睨んだ。

「危ないじゃないか!」

バイラは、僕の言葉を無視し、明菜の左手を見た。

「最初から、お前達に、用はない」

バイラは、明菜の薬指についた指輪を、指差した。

「さっさと、指輪をつけろ」

僕は驚き、バイラと指先を交互に見た。

「我々が、用があるのは、アルテミアだけだ」

「指輪をつけろ」

サラが、前に立つ。

「言われなくても」

僕はしゃがみ、土の上に、優しく明菜を横たえた。

ゆっくりと、腕を取り、指輪を外すと、

明菜の体が、透けるように、消えていく。

戸惑う僕に、バイラは言った。

「安心しろ。もとの世界に、戻っただけだ」
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