天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
休み時間。


(この巨乳好きが!)

と怒りを露にしながら、いつものように、難癖をつけようと、中島の席に近づいたら、

声が聞こえてきた。


「…昨日、××××の写真集見たんだけど…気持ち悪かったよ。やっぱり、あそこまで大きいと、逆にひくよな」


あたしは、踵を返すと、九鬼の前に戻り座ると、

「違うみたい!」

満面の笑顔になるあたしを見て、九鬼は首を傾げた。

「何が?」

どうやら、昨日のことは憶えてないらしい。




放課後、誤解がとけて、1人喜んで、校舎から飛び出すと、

突然の雨が、降っていた。

空は晴れているのに。


「通り雨か…」

あまりにも激しすぎる雨は、帰る気をそいだ。

(少し待ったら……止むかな?)

カバンの中に、念のための折り畳み傘が入っていた。

少し悩みながら、雨宿りをしていると、少し離れたドアから、中島が出てきた。

「雨?」

驚いて足を止めた中島は、隣にいるあたしに、気付いた。


目が合う二人。

反射的に目を反らしてしまった。

(駄目!)

これじゃ…折角隠してきた思いが、ばれてしまう。

慌てて、顔を中島に向けると、

中島が顔を背けていた。


(そりゃあ…そうよね)

あたしは、中島に嫌われてるんだから……。




「中島…」

そう思うと、気が楽になった。


あたしは、悲しさを見せないように笑った。


どうやら、中島は傘を持っていないようだ。

「フッ」

カバンの奥から、折り畳み傘を取出し、

「いっしょに…」

と言い掛けて、目を丸くした。


中島は知らない女の傘にいれられて、校舎から歩き出していたのだ。

あまりの一瞬の出来事に、あたしはその場で、凍り付いた。

ちらっと中島が、あたしを見たことにさえ…気付かずに……。
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