天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
やっぱり……きける訳がない。




昼休み。

意を決したあたしは、中島の交友関係を探ることにした。

ストーカーと思われたくないから、背筋を伸ばし、胸を張り、たまに髪をかきあげたり…無駄な動作を入れて、学校中を歩き回る。


「相原さんだ…」

あたしが通ると、なぜか…男子生徒が避けて、道を開けてくれる。

(……まあ、いいわ。探しやすいし)

あたしは颯爽と、廊下を歩く。

(中島は?)


渡り廊下の近くを通った時、視線の端に、中島を発見した。

右に曲がれば、渡り廊下だが、あたしはそのまま真っすぐに、歩き…しばらくして、急いで曲がり角に戻った。

壁に背中をつけ、片目が出るくらい顔を出し、渡り廊下を覗いた。


中島は、1人ではなかった。


ハンマーで叩かれ、さらに鉄球を落とされたような衝撃を受け、

あたしは渡り廊下に、体をさらす訳にはいかないので、仕方がなく…遠回りして、自分のクラスに戻ることにした。

ふらふらになりながら…。


教室に戻ると、まるで酔ってるような千鳥足で、九鬼の前までいき、机の上で崩れ落ちた。

「ま、真弓……」

蚊が鳴くような声のあたしに、九鬼は顔を上げると、首を傾げた。

「何?」

がばっと、顔をあげると、あたしは九鬼を見つめ、

「男って……1人の女では、満足できないって…本当だったんだな」


それを聞いて、九鬼は教科書を閉じると、

「そうなのか!」

驚いた顔をあたしに向けた。

あたしは頷くと、

「多分!だって…昨日と違う女といたんだ!」

「そうか…」

「もう二人だ!もしかしたら、とんでもない女たらしで!もっと、もっと、もっと!女がいたら、どうしょう!」

頭を抱えるあたしに、九鬼はまた席を立ち、

「許せない!」

中島の席に行こうとした。

我に返ったあたしは、後ろから抱きつき、九鬼を止めた。
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