天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「やっぱり!女たらしなんて、最低よね!」

九鬼を止めたけど、授業中…ずっと考えていたあたしは、休み時間になると席を立ち、

「注意しなきゃ!」


「理香子…」

九鬼は立ち上がり、横を通り過ぎようとしたあたしの手を取ると、教室から連れ出した。

廊下の隅で、九鬼はあたしの両肩に手を置き、

「あんな女たらしは、やめた方がいいわ。あなたならもっといい人が見つかるはず。失礼だけど中島は…」

九鬼は咳払いをした後、

「あまり…かっこよくないし」


「な!」

思わずあたしは、九鬼に詰め寄った。

だけど、九鬼は真剣な目で、

「あなたは…スタイルはモデル並みだし…普段はいたって、クール。その癖、気さくだから……あなたのファンが、この学校にどれだけいるか…」

ため息をつくと、九鬼はちらりと左右を見た。

何気に、廊下で談笑しているように装っている男子が、数十人。

「この階の廊下だけ、おかしいでしょ…」

九鬼は、あたしを見つめ、

「生徒会に来る…悩み相談で一番多いのは…理香子!あなたと話したいなのよ!」

「な!」

あたしは、驚いた。

どんな学校だ。


「そんなあなたが、最低な男を気にすることはないのよ」

九鬼は肩から、手を離した。

「九鬼…」

九鬼は笑いかけると、手を取り、教室にあたしを押し込んだ。

あたしが、九鬼から離れると、

廊下にいた男達が、九鬼の周りに群がる。


「生徒会長。相原さん…今日は、どうしたの?」

「何でもありませんわ」

きいてくる男達に微笑むと、九鬼はトイレに向かった。


九鬼にそう言われたけど、 

あたしは教室に入ると、中島の後ろに向かった。

(ごめんね。九鬼)


あたしはなぜか…えらそうに、中島に話し掛けた。


「中島!放課後、話がある」

少し凄んだあたしの雰囲気に、教室内…廊下の男達が凍り付く。


その時、あたしは呼び出しの意味がわからなかった。
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