天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「チッ」

周りを確認した九鬼は、飛び散り潰された頭や脳髄が、カルマのものであると断定した。

しかし、自分がやった記憶がない。


スカートのポケットから、乙女ケースを取りだした。

ある程度、ムーンエナジーは回復していたが、

変身した形跡はない。


「だとしたら…誰が、この人を…」

首のない胴体を見下ろしていた九鬼は、はっとなった。

「この人の乙女ケースがない!」

九鬼は舌打ちした。

と言うことは…ピンクの乙女ケースを奪ったやつがいるはずだ。


周囲を警戒しながら、

「他に…月影がいる!?」

乙女ケースを握り締めた。

神経を研ぎ澄まし、気配を探す。


だけど、礼拝堂の中には…誰もいない。

それでも、詮索をやめない九鬼の耳に、

ギターの物悲しい音が流れてきた。

「ま、まさか」


九鬼はそのメロディに聞き覚えがあった。

音楽に疎い、九鬼でも知っている大ヒット曲。


その音は、礼拝堂の扉の向こう…つまり、外からした。

九鬼はダッシュで扉を開けると、警戒しながら路面にジャンプした。

距離を取った九鬼は、目の前にいる人物を睨んだ。

教会の前に、路駐違反をしている車のボンネットに座る優を発見した。


「高木さん!?」

思いがけない相手に、九鬼は躊躇いながら、戦闘体勢に入っていた。

「九鬼真弓…。いや、乙女ブラック!」

優は弾いていたギターの弦を、手で止めた。

そして、ボンネットの上から降りると、

「その力…頂く」

ギターを突きだすと、緑の乙女ケースに変わった。

「装着!」

乙女グリーンに変身する優の様子に、目を細めると、

九鬼はゆっくりと乙女ケースを突きだした。

「装着」

乙女ブラックに変わる九鬼。

優は、九鬼を指差すと、

「あたしの歌の為…その力貰う」

光の輪を作り出し、九鬼に向かって投げた。
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