天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
ドリル状に回転する二つの光の輪は、まるで風に舞う紙切れのように、無軌道に九鬼に向かって、襲いかかる。

「乙女ブラック!あたしがつくる新しい歌の為に、死ね!」

九鬼の目の前で、光の輪は一気にスピードを上げた。

九鬼は目を瞑ると、目にも止まらない動きで腕を交差させた。


「な!」

驚く優の目に、二つの光の輪を、指先で挟んで持つ…九鬼の姿が映った。

「乙女スプラッシュを…掴んだだと!」


九鬼はゆっくりと、目を開き、

「どんなに速くても、空気を切り裂く音で軌道が読める。それに、このリングは…ムーンエナジーでできている。ならば!」

九鬼はつまんだ光の輪を、グリーンに見せ、

「ムーンエナジーを手に集中させれば、取ることは可能」



「ば、馬鹿な!」

優の手のひらで、無数の光の輪が作られ、

一斉に九鬼に向かって、投げた。


「なめるな!」

自分のムーンエナジーを流し込み、肥大させたリングを振ると、九鬼は襲いかかる光の輪達を切り落とす。

「そ、そんな…」

唖然とする優に向かって、九鬼はリングを投げた。

巨大化したリングに唖然となる優に向かって、九鬼は飛んだ。

接近するリングに気を取られた優。

「じ、自分の技で!」

優の眼鏡が光り…放たれた光線が、二つのリングを破壊した。

にやりと笑った優の目の前に、飛んだ九鬼が迫ってくる。

「ルナティックキック!零式!」

光の破片が飛び散る隙間を縫って、インパクトの瞬間伸ばされた足が、

優を蹴った。

「うぐあ!」

吹っ飛んで、背中から地面に倒れた優。


間髪を入れずに、蹴ると同時に後方へ回転し、地面に着地した九鬼は、足を曲げ再び飛翔する。

膝を曲げ、倒れている優の鳩尾辺りに突き刺した。

「う!」

体がくの字に曲がった優から、九鬼はすぐに離れ、再び構えた。
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