天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「あ、あたしは…」

優はよろけながらも、何とか立ち上がろうとするが、片膝をついた体勢で息を整える。

前に立つ九鬼を睨み、

「負ける為に、この力を得たんじゃない!」

乙女ケースを突きだした。

「兵装!」

乙女ケースが光り輝くと、武器に変わる。

優にまとわりつくと、両肩についた巨大な砲台に変わる。

「あたしは、新しい歌を作るんだ!人々を救う歌を!」

砲台の照準が、九鬼に向く。

「誰も作ったことのない…歌。咎人の歌を!」

砲台の先が光り、高濃度の光の粒子が集まっていく。

「真に救う為には、人のすべての罪を知らなければならない。その為には、人を殺さなければいけない!だから、あたしは月影になったんだ!!」

優の叫ぶに呼応して、二本の砲台から分厚い光線が放たれた。


「チッ!」

九鬼は上空へとジャンプした。

「無駄だ!」

二本の光線は、螺旋状に絡み合うと、軌道を変え、上空に飛んだ九鬼に向かって飛んでいく。

「乙女キャノンからは、逃げれるか!」


光線は、九鬼の跳躍より速かった。


「この世界では、人を殺すことは大罪!だけど、月影になれば!月影同士ならば!殺せる!」


「愚か者め!」

優の言葉を聞いた九鬼は、怒りの表情に変わった。

空中で反転し、足の裏を月に向けた後、今度は下から上がってくる光線に、足を向けた。

「月影キック!」

足許から輝き、光の矢と化した九鬼が落下する。


「何!?」

優の放った光線を貫きながら、九鬼は地上にいる優目掛けて、加速する。

「人を殺して、作った曲などに!誰が救えるか!」

「それでも、他にない曲になる!」

「そんなものは!自己満足だ!!」



月影キックが、優のお腹の辺りに炸裂した。

「うわああ!」

一瞬で変身が解け、優は地面に転がった。

グリーンの乙女ケースも、優の手からこぼれ落ち、道端に転がった。

乙女ケースよりも、倒れている優を見下ろす九鬼。


「チキショー…」

何とか立ち上がろうしたが、体がまったくいうことをきかなかった。


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