天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「人間に憑依し、さらに無理矢理…バンパイアへと変化させたか」

アルテミアは、デティーテェの姿を分析した。

「人間など腐る程いるからさ」

魔神形態となったデティーテェは、アルテミアを睨み、

「貴様の父!ライによって殺され、我々は肉体を失い…魂は、月へと幽閉された!」

上空の月を仰ぎ見た。

魔王レイから、王位を奪ったライは…レイをロストアイランドに幽閉した。

さらに、配下の者達を殺した後…肉体と魂を分離させた。

魂は、月へ封印し、

肉体は、ロストアイランドに放置した。

赤星浩一が、ロストアイランドで戦った骸骨の兵隊達は、放置され腐った肉体の成れの果てであった。


「フン!」

アルテミアは鼻を鳴らすと、顎を上げ…デティーテェを見下した。

「お前は、ライに殺されたのではないだろう?マリーに、抵抗する間もなく、殺されたと聞いているぞ。死の女神さん」

最後の馬鹿にしたような言葉に、デティーテェはキレた。

「貴様!」

バンパイアの解放状態であるデティーテェは、一瞬で間合いを詰め、死角から鋭い爪をアルテミアの首筋に突き刺そうとした。

「死ね!天空の女神!」

ナイフよりも鋭利な爪は、アルテミアに突き刺さった…はずだった。



「な!」

アルテミアの肌に触れた瞬間、爪は折れた。


「フッ…。お前如きの爪で、あたしを傷つけれるかよ」

アルテミアは体を捻ると、爪が折れて唖然としているデティーテェのボディに膝を突き刺した。

「うぐぅ!」

体をくの字に曲げて、空中に飛び上がるデティーテェ。


「ば、馬鹿な…」

遥か上空まで飛ばされたデティーテェは、唖然とした。


地面が遠い。


「か、解放状態でなかったら…」

お腹を押さえながら、羽を広げたデティーテェの口から、鮮血が溢れた。


「こ、これほど…なのか」

地上のアルテミアを探すデティーテェの耳元で、囁く声がした。

「お前が…弱いだけだ」



「え?」

驚いたデティーテェが振り返った瞬間、

拳が頬にヒットした。
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