天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
九鬼に体を揺らされて、美亜は恐る恐る目を開けた。

「九鬼様…」

九鬼の顔を確認すると、安心したのか…微笑んだ。

そして、

「ば、化け物が…」

気が緩んだのか…そのまま、意識を失った。

カクンと落ちた首を支えるように、九鬼は美亜を抱き締めた。

「阿藤さん!」

どこにも外傷がないことを確認すると、九鬼は安堵のため息をついた。



「これは…あなたがやったのかしら?」

突然、後ろから声をかけられ、 九鬼は絶句した。

まったく気配を感じなかった。

「何!?」

慌てて振り向こうにも、後ろから首筋に差し込まれた冷たいものが、九鬼の動きを封じていた。

「あまり見ないうちに…弱くなったのかしら?」

九鬼はその声に、聞き覚えがあった。

「すぐに、殺したらどうですか?お姉さま」

九鬼の前に、リオが現れた。

「そうね〜」

後ろにいる者は、笑った。

首筋に差し込まれたものは、鋭い刃だった。

九鬼の首筋に触れるか…触れないかの距離を保っていたが、

「すぐに、殺すのもいいけど…。その前に、きかないとね」

刃が首筋に当たった。

「闇の女神について」

刃に力がこもった刹那、九鬼は力に逆らうことなく、中腰の体勢で回転した。

「な!」

美亜を抱き締めながら、刃の動きよりも速く、首を後ろに曲げながら、回転することで、後ろにいた女の足を払った。

バランスを崩す女。

「お姉さま!」


九鬼は右手で美亜を抱き締めながら、左手を地面につけると、それを支点にして、右足を突きだした。

「きゃ!」

リオには似合わない…かわいい声を上げて、ふっ飛んだ。

蹴りの体勢から、体を曲げてジャンプすると、九鬼は立ち上がった。

「装着!」

ブラックの乙女ケースを突きだした。
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