天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
ふっ飛んだことで緩んだガードの隙間を、真っ直ぐに突きだされた足が貫く。

「ルナティックキック三式!」

さらに、体を回転することで、ドリルのようになった九鬼の体が隙間を抉る。

鋭さを増した足から脱出する為に、神流は体を横にスライドされた。

神流の横髪と頬を切り裂いて、回転する九鬼の足が神流の後ろの地面に突き刺さった。

「チッ!」

頬から流れる血を気にする暇もなく、振り向いた神流の目に、突き刺さった足を支点にし、回転を利用してさらに鋭さを増した回し蹴りが映る。

ピシッ。

空気が破裂する音がした。

音速を超えた九鬼の蹴りが、神流の首筋に炸裂したのだ。

ガードする暇もなく、蹴りを喰らった神流は再びふっ飛んで、地面に転がった。

変身が解ける。


「お姉さま!」

リオが、神流と九鬼の間に割って入る。

「よくも〜お姉さまを!」

怒りに震えるリオが、九鬼に襲い掛かる。

「死ねえ!」

ダイヤモンドの拳が、九鬼に迫る。

しかし、冷静な九鬼はそれを片手でいなすと、腰を下げ、リオの足を払うと同時に、体を内側に押し込んだ。

すると肩でリオを担ぐ格好になる。

そのまま、腰を上げると回転し、リオを頭から垂直に落とした。


「ぐわ!」

リオは頭から、地面に叩きつけられた。

一連の動きは滑らかで、九鬼はほとんど力を使っていない。

「お、おのれえ!」

受け身を取ることができなかったリオは、全体重を首を受けたことになった。

首を押さえ、立ち上がった時には、九鬼は目の前にいなかった。

「どこだ!」

リオが周囲を見回した。

「上だ!」

再び乙女ケースを掴んだ神流は、上空を見上げた。


「上!?」

神流の言葉に、見上げたリオの瞳に、猛スピードで落ちてくる光の玉が見えた。

「ヒイイ」

その迫力に、リオが無意識に後退ると同時に、光の玉は鼻先を通過し、地面に激突した。
< 1,504 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop