天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「違う」

九鬼はジャンプした。

「何が違うか!それが、力!それを否定するならば!お前はなぜ、力を使う」

神流は、空中に飛び上がろうとする九鬼の足を狙う。

「それは、弱き者を守る為だ!力ある者は、無き者を守る責任がある!」

「戯れ言を!金ある者が、金無き者に与えるか!そんな偽善!人間の本性の前では、崩れ落ちるわ!」

「だとしても!」

九鬼は、ジャンプの軌道を変えた。

上ではなく、前に飛んだ。

「な!?」

神流の下に潜り込む形になった九鬼は、両手を地面に付けた。

「人の本質が、善でなかったとしても!」

九鬼は腕を曲げ、倒立の形を取った。

「人は、善を知り!善に憧れる!それが」

そして、腕の力だけでなく、全身を曲げると、バネのように突き上げた。

「我々月影のようなヒーローをつくる!」

神流の腹に、九鬼の足が突き刺さった。

「ルナティックキックニ式!」


「ぐわああ!」

神流は、くの字に体を曲げて、さらに空中に飛び上がった。

九鬼は再び、手から地面に着地すると、反転し立ち上がった。


「力は…善にも、悪にもなる!しかし、力ある者は責任を背負う!」

九鬼は右足が輝いた。

「はっ!」

気合い一閃。

九鬼の回し蹴りが、落下してくる神流の顔面を蹴った。


「馬鹿な…」

吹っ飛んだ神流は、地面を抉りながら、転がった。

「あたしは…」

魔獣の体で、ふらつきながらも、立ち上がる神流。

「安定者…。そして、人間を超えた存在…。なのに!」

前を見た時、九鬼の右足が目の前にあった。

「こんな小娘に!」

「月影キック!」

九鬼の足が、神流の胸を貫く。

足だけではなく、九鬼の全身がムーンエナジーで輝いた時、

九鬼の体は神流の体を通り抜けていた。


後ろに着地した九鬼に、振り返った神流がきいた。

「お前は…何者だ?」

その問いに、ゆっくりと立ち上がった九鬼がこたえた。

「闇夜の刃…乙女ブラック」
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