天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「そして…責任を背負う者だ」

九鬼はもう振り返らなかった。


「お姉さま!」

リオの言葉も虚しく…土手っ腹に穴が開いた神流は、どこからかカードを取り出した。

「あたしは…安定者…」

それは、ブラックカードだった。

しかし、カードシステムは崩壊していた。

土手っ腹にカードを当てても、治癒魔法は発動しない。

「お、おのれ…」

神流はそのまま…前のめりに倒れた。

「よくもお姉さまを!」

ふらつきながらも、拳を握り締めたリオが襲い掛かる。

後ろから、ゆっくりと離れていく九鬼の背中を狙う。

「許さない!」

ダイヤモンドの拳が、九鬼の背中に突き刺さるより速く…リオの背中に、光のリングが突き刺さっていた。

先程、破壊された部分に突き刺さったリングが回転し、食い込む。

「い、いつのまに…」

あまりの痛みで、リオは気を失った。

と同時に、背中のリングは消えた。

九鬼は決して、振り返ることなく…教会のそばから離れていった。





「あれが…九鬼真弓…」

屋根の上から、美亜が飛び降り、神流のそばに降り立った。

「フン」

鼻を鳴らすと、九鬼の消えた方を睨み、

「甘いな…。それに、まだ未熟。まだ…熟してはいない」

と言うと、口許をゆるめた。


「それにしても…」

ゆっくりと視線を下ろすと、倒れている神流を見た。

「役立たずが!」

神流の体を蹴り起こした。

土手っ腹に開いた穴が、少し小さくなっている。

「折角…助けてやったというのに」

美亜が穴に向かって、手を伸ばすと、

再生能力が止まり…逆に、崩壊していく。

「まあいい…。お前の役目は終わった。月影のイメージを変え、人々に恐怖を植え付けた」

消滅していく神流から、顔を見上げ、上空の月を見た。

「美しき…月。しかし、そなたが、闇に染まる時…巨大な力が生まれる」

美亜は、手を月にかざし、

「その力は…あたしが貰う!誰よりも強くなる為に」
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