天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「何だ?」

異様な力を感じたカレンは、教室から飛び出した。

その力は、月からだけではない。

まだ微力だが、学校内からも漂っていた。

それは、強力なムーンエナジーを隠れ蓑にして、姿を見せようとしていた。

まだ月影としてシンクロ率が低いカレンには、ムーンエナジーに騙されることなく、もう1つの力を見抜くことができていた。


その力は、学園の一番隅から漂っていた。

校舎を飛び出し、各教室からもれる明かりに照らされたグラウンドを疾走する。


「その力は…プールの方から?」

屋外にある巨大プールは、新しく体育館のそばに作られた室内プールの登場により、使われることはなくなっていたはずだ。

立ち入り禁止になっているプールの入り口に、誰かが立っていた。


「やはり…あなたね」

近付いてくるカレンを認識した女は、ゆっくりと腕を突きだした。

「カレン…アートウッド!」

「お前は!」

プールの前にいたのは、リオだった。

「装着!」

「チッ!」

ここで普通ならば、月影の力を使うはずなのだが、カレンが選んだのは、生身の肉弾戦であった。

「ここで、何を企んでいる」

ジャンプすると、空中で身を捻り、蹴りを繰り出す。

しかし、乙女ダイヤモンドになったリオは片手でガードした。

「昨日のような…へまはしない」

リオはカレンを睨むと、腕の力だけでカレンの足を弾き返した。

カレンは一回転すると、地面に着地した。


「カレン・アートウッド!」

リオは拳を握りしめ、

「あなたには借りがある」

少し間合いをつめた。


「妹の眼鏡を奪った為に、妹は月影の力を失った!だから!」

突然、プールに残っていた水が弾け飛んだのが、塀越しでも確認できた。

「妹は…」

リオは一瞬、肩をおとして見せた。


「梨絵は…さらなる力を得ることができたのだ」

「何!?」

リオの後方…プールの底を突き破り、

強大な機械の腕が飛び出して来たのだ。
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