天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「斬る!」

カレンはピュアハートを回転させると、ブーメランのようにガンスロンの砲台に向けて放った。

少し傾いたガンスロンの巨体に、ピュアハートが舞った。

発射しょうとしていた二本の砲台がスライドし、グラウンドに落ちた。

「やったか!」

砂煙が舞う中、九鬼は腕を抜くと、ガンスロンの下から抜け出した。





「無駄だ」

その様子を見ていた兜がほくそ笑んだ。



「何!?」

砲台を失って、発射できなくなったと思っていたカレンは、ピュアハートを掴み、グラウンドに着地した瞬間、絶句した。

ガンスロンの両肩から、放射状に光が放たれ、空を焼いていたからだ。



「撃て!撃ちまくれ!」

兜は叫んだ。

「予定は違ったが…これで、私は帰れる!」


「成る程…」

歓喜の声を上げて、上空を見上げる兜に後ろから近づく影。


ガンスロンは自らの肩を焼き尽くす程のエネルギー波を放射し続けた。

結界が割れ、大月学園の空を破壊した。


「大勢の人の命を媒介にし、女神の一撃に匹敵する力を酷使することで、時空間の壁を壊したのか?」

後ろからの声に、兜は振り返った。

黒髪を靡かせた少女を見つめた。

「君は?確か…阿藤さん?」

兜は目を細めた。

いつもの美亜の口調ではない。

威圧的で、妙な落ち着きがある。

「人間を騙し…闇も騙したのか?」

美亜は目を凝らし、大月学園一帯を囲む結界を見つめた。

兜は目を見開き、美亜に体を向けた。

「お前は…何者だ?」


美亜は鼻を鳴らし、

「あたしが、何者かはどうでもいい。問題は、お前がやっていることだ」

美亜はガンスロンを見つめ、

「本当ならば…この結界内を、このまま…向こうと入れ変えるつもりだったのか?」

兜は息を飲み込んだ。

「あんな機械と…闇に侵された者達を連れて…自分の世界に…」

美亜は横目で、兜を睨んだ。
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