天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「空が割れた?」

ガンスロンの下から、飛び出した九鬼は、エネルギー波によりひび割れた空を見上げていた。

そんな九鬼の姿を見たガンスロンが、傾いていた巨体を動かした。


「オトメ…レッド…」



「え?」

九鬼は、その声を聞いたような気がして、視線をガンスロンに向けた。

巨大な左手が、九鬼に向かって伸びて来る。

「九鬼!」

ピュアハートを握ったカレンが、ガンスロンの左腕を蹴った。

「ぼおっとするな!」

カレンの激に、はっとした九鬼が構え直そうとした時、後ろから何かが落下した鈍い音がした。

振り返ると、人が落ちていた。

九鬼は、その人に見覚えがあった。

「兜博士!」

慌てて駆け寄った九鬼は、倒れている兜を抱き上げた。

「バチが…当たったよ…」

そう言うと、九鬼の腕の中で、兜は笑いかけた。

「どうしたんですか!」

九鬼の問いに、兜はこたえなかった。

ただ涙を流し、

「帰りたかった…」

「兜博士」

「ぐわっ!」

兜は血を吐き出し、話すことができなくなった。

「すぐに…手当てを」

兜は首を横に振った。 そして、血で口の中をいっぱいにしながらも、何とか最後の言葉を吐き出した。

「…闇に…堕ちるな…」


それが、兜の最後の言葉になった。

「兜博士!!」

九鬼の腕の中で、兜は息を引き取った。

その魂が、帰れたかはわからない。

「く!」

顔を背け、悲しみを抑える九鬼。

今は、泣いている場合ではない。

九鬼は、兜を地面に横たえると、立ち上がった。


ガンスロンと格闘するカレンの姿が、目に映った。


ガンスロンの背中のミサイルポットが開き、再びミサイルを発射した。

「させるか!」

カレンは、ピュアハートを回転させると、ミサイルポットに向けて、放った。

発射間近のバラける前のミサイルの束を切り裂き、爆破で誘爆を狙ったが、一部ミサイルは爆発の中から飛び出した。
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