天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「ど、どうして…」

突然、空間を破って現れた九鬼は、理香子の前に飛び込んだのだ。

「あなたは…勘違いをしているわ」

九鬼は笑った。

「チッ」

アルテミアは舌打ちした。

しかし、貫いた腕を抜くことなく、逆に力を込めると、

「順番は変わったが…闇の女神の力を先に頂く」

アルテミアは剣を離すと、血塗れの手で、九鬼の首を掴み、自らに引き寄せた。

すると、九鬼の体がぶれて、2つに別れた。


学生服の九鬼は、背中から地面に倒れた。


「ど、どうしてだ…。乗っ取ったはずなのに…。なぜ意識を保ち、体を動かすことができたのだ」

アルテミアに胸を貫かれ、首を掴まれているのは、乙女ダークとなっていたデスペラードだった。

「どうしてだ!どうしてだ!」

デスペラードの顔が、タキシードの男に変わる。

「折角…世界を手にできるのにい!」

「それは、残念だったな」

アルテミアは笑った。



「真弓が2人!?」

理香子は戸惑い、デスペラードと九鬼を交互に見た。

「理香子…」

九鬼の胸元も、血が溢れていた。

「真弓!」

理香子は走り出していた。

あれだけ憎んだ相手だったが、気づいた時には駆け寄り、手当てをしていた。

幸いにも、アルテミアの拳は心臓を外れていた。

理香子は、九鬼の傷口に手をかざした。

温かい光が、九鬼の傷を癒していく。

「理香子…」


九鬼は理香子を見上げ、

「中島を襲ったのは、あいつだ」

アルテミアに力を吸いとられまいと、必死に抵抗しているデスペラードの方に顔を向けた。

デスペラードの抵抗も虚しく、彼女の体を覆う戦闘服が消え、乙女ケースが九鬼のそばまで転がった。

「それに…」

九鬼がもう一度、理香子の顔を見ようと上を見上げた。

そして、九鬼ははっとした。

ガンスロンによって破壊させた結界が閉じだし、実世界と繋がった道も消えようとしていた。

「理香子!」

九鬼は治療の途中、上半身を上げた。

「あなたは…帰らなくちゃいけない!」
< 1,551 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop