天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「また会おう」

カレンは、九鬼に右手を差し出し、拍手を求めた。

「はい。またお会いしましょう」

九鬼は、カレンの手を握り返した。

そこから、もう言葉はなかった。

繋がる手と、握り合う力が、互いを雄弁に語っていたからだ。



「じゃあな」

カレンから握手を解くと、すぐに背を向けて歩き出した。

九鬼は、そんなカレンの背中を無言で見送る。




「そうだ」

カレンは、屋上の扉の前で振り返った。

「あんたの戦い方は、あたしの師匠に似ている。ジャスティン・ゲイっていうんだ。あの人だったら、あんたをもっと強くしてくれるかもしれない」


「ジャスティン・ゲイ…」

九鬼は呟いた。なぜか…聞いたことのある名前だった。

「といっても、今はどこにいるのか知らないんだけどさ。なんせ放浪癖があるから」

カレンはため息をつくと、屋上の扉を開けた。


そのドアが完全に閉まるまで、見つめていた九鬼は、ふと空を見上げた。


「理香子…」

彼女は帰れただろうか。

そして、向こうの世界にいる仲間達。

里奈や夏希、蒔絵に桃子…そして…。


「加奈子…」

九鬼の脳裏に、浮かぶ1人の少女。
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